六十歳で家を建てることをお勧めしたい理由は他にもある。家とともに朽ちてはいけない一時期、定年後の夫を評してよく言われた言葉に「粗大ゴミ」があった。私なども同年代の男としてじつにいやな気分にさせられたものだが、家の設計を頼まれてさまざまな夫婦といろいろな話をしてみると、「なるほど、粗大ゴミと言われてもしょうがないな」と思えるようなご主人方も少なくなかった。なにしろ、朝から晩まで「何もしない」というのである。
(参考)
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ただ家にいるだけ、場所を占領するだけ、食べて寝るだけ。奥さまから見れば邪魔なだけに違いない。少し敏感で自分の置かれた状況を理解できる夫たちは、極力、妻や子供たちの邪魔にならないよう居場所を求めて右往左往する。妻の友だちが遊びに来ればリビングルームのソファから退去し、息子や娘が帰宅すればテレビがよく観える席を明け渡す。そして、「この家には自分の居場所がない」ことを痛感するのである。サラリーマンとして四十年近くも働き続けた末、ようやく帰りついた我が家に居場所がない。なんと悲しく、淋しい話だろう。そんな家で、これからの二十年、三十年を乗り切れるのだろうか。夫婦で末永く、楽しく健康に暮らせるのだろうか。